最近、ニュースやインターネットで見かける機会が増えてきた「出生前診断」。
2022年に新型出生前診断(NIPT)の年齢制限が撤廃され、これまで認可施設では35歳以上しか受けることができなかった検査を全世代が受けられるようになりました。
今回は出生前診断の種類や受ける施設の違いを、28歳の私が実際に受けた身としてご紹介します。
出生前診断とは?
出生前検査とは、出生前に子宮内の胎児に先天性の疾患がないかをを診断する検査のことです。
検査には様々な種類があり、超音波を用いたり、羊水や母親の血液を採取することで診断することができます。
先天性疾患とは?
下記にでてくるお話は、すべて私が受けた病院(認可施設)の遺伝カウンセラーの方に伺った内容です。
出生前診断では、染色体の異常に起因する疾患の有無を調べることができます。
ヒトは、22対の常染色体と1対の性染色体の合わせて46本の染色体を持っています。23個のトレーの中に2本ずつの染色体があるというイメージです。
それぞれの染色体の中には1000個ほどの遺伝子が入っているといわれており、染色体が欠損していたり重複していたりすると異常が発生し、その影響が大きい場合は流産に繋がります。
しかし遺伝子の数が少ない染色体では、異常があったとしてもその影響が他の染色体よりも少なく、その子は母体のお腹の中で生き延び、生まれてくることができるのです。
染色体の数的異常で最も多く見られるものは、下記の3つです。
- 21トリソミー:21番目の染色体が3本ある
- 13トリソミー:13番目の染色体が3本ある
- 18トリソミー:18番目の染色体が3本ある
中でも21トリソミーが最も多く、これがいわゆる「ダウン症」とよばれる疾患です。13・18トリソミーは自然流産に至る可能性も高く、出生できたとしても長く生き延びることができないそうです。
発達障害は遺伝?
自閉症やADHDといった発達障害は、複合的な要因によって引き起こされるとされており、遺伝疾患ではありません。
つまり、出生前診断でこのような障害を知ることはできません。
私が受けた理由
私の場合は、「お腹の子に何か障害があるのであれば、早めに知って準備しておきたい」という理由で受けることにしました。
幸い検査の結果は陰性でしたが、もし陽性が確定した場合は、その子を産むのかどうかを決めなければなりません。
私が病院の遺伝カウンセラーの方にきいた話では、現時点では90%の方が堕ろすことを選択されるとのことでした。
なお、病院ではこの検査を受けてくださいと勧められるわけではなく、受けるのであればあくまで希望制で受けられますというスタンスでした。
出生前診断の種類
現在主に実施されている検査は以下の5種類です。
- 胎児超音波マーカー検査(FTS)
- 母体血清マーカー検査(クアトロ検査)
- 新型出生前診断(NIPT)
- 羊水検査
- 絨毛検査
上の3つが「非確定検査」、下の2つが「確定検査」とよばれており、一般的には3つの検査のいずれかで陽性となった場合に、下の2つの検査のいずれかを受け、診断を確定させるという流れが主流です。
【非確定検査】それぞれの検査の違い
「出生前診断を受ける」となった際にまず検討する、上の3つの検査を詳しくご紹介します。
胎児超音波マーカー検査は、妊婦検診で受けるエコー検査をより丁寧に行い、ダウン症児に見られる首の後ろのむくみ(NT)や、血流等をチェックすることで、心臓に異常がないかを調べることができる検査です。診断には高い技術が求められ、資格を持った医師しか実施することができないため、受けられる施設も少ないようです。遺伝カウンセラーの方によると、検診の中で心音に異常が見られたとき等に主治医に勧められて受ける方が多いとのことでした。
母体血清マーカー検査は、一般的にクアトロ検査とよばれるもので、母体の血液を採取した上で、18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)・神経管閉鎖障害がないかを知ることができる検査です。検査結果はパーセンテージで出るので、どこからが陰性でどこからが陽性とするかの判断は私たちに委ねられています。また、年齢等の複合的な要素で診断結果を出しているため、高齢であるだけでハイリスクという診断が出てしまうこともあり、検査精度は83〜87%といわれています。
新型出生前診断(NIPT)も血液を用いた検査です。母体の血液には胎盤の組織が数%含まれているため、その組織から染色体を取り出してすべての染色体を調べます。検査内容は受ける施設によって異なりますが、13トリソミー・18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)の有無を知ることができます。検査精度が99%と高いのが特徴ですが、費用は他の検査よりも高額です。
【確定検査】どんな時に選択するの?
羊水検査・絨毛検査は、それぞれ羊水・絨毛を採取して診断するもので、確定診断を下すことができる検査です。
検体の採取にあたってリスクがあるため、一般的には上記3つの検査で陽性となった場合に選択されますが、「確定診断」が欲しいということで、初めからこれらの検査を選択される方もいらっしゃるそうです。
診断を受けるまでの流れ
私は妊娠前から出生前診断を受けることは決めていたので、検診を受けている総合病院で申込をしました。
その病院では、まずは夫婦で「遺伝カウンセリング」というものを受ける必要がありました。
カウンセラーの方から遺伝疾患に関する説明を受け、本当に出生前診断を受けるのか?どの検査を受けるのか?を相談して決めていきます。
私たち夫婦は理系ではありませんが、こんなブログを書けるほどに丁寧に分かりやすく説明をしていただきました。
そしてこの1時間ほどのカウンセリングを経て、最も検査精度の高いNIPTを受けることに決めました。
ちなみに、国立成育医療研究センターの調査(2014年9月~2017年9月)によると、遺伝カウンセリングを受けた95%の妊婦が出生前検査を受検し、その50%がNIPTを選択したそうです。
どこで検査を受ける?
現在、NIPTを実施している施設には、日本医学会連合が認可している「認可施設」と、していない「認可外施設」があります。「認可施設」ではこれまで、遺伝性疾患が発生するリスクが高い35歳以上の方しかNIPTを受けることができませんでしたが、2022年に年齢制限が撤廃されています。
そのため、どなたでも「認可施設」か「認可外施設」かを選ぶことができるのです。
ではどちらが良いのか?
まずは費用面で比較します。私が調べたところ「認可施設」では検査費用が10~20万円、「認可外施設」はもう少し安くなる印象です。
また検査範囲に関しても、「認可施設」では13トリソミー・18トリソミー・21トリソミー(ダウン症)の有無のみ調べてくれるのに対し、「認可外施設」では3つ以外の疾患や性別まで調べることも可能です。
認可施設と認可外施設の違い
これだけ書くと、「認可外施設」の方が安いし、たくさん調べてもらえるので良く見えるかもしれませんが、デメリットももちろんあります。
そもそも、日本医学会連合の認可を受けるためには、日本医学会と日本産科婦人科学が定めた下記の指針を満たす必要があります。
- 出生前診断に精通した臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーが複数名所属し、専門外来を設置して診療している。
- 臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーは検査についての研修などを通し、検査法についての知識を十分に有し、結果説明やカウンセリングに対応できる。
- 専門外来で30分以上の診療枠を設定し、カウンセリングを行いその中で検査説明を行う。
- 検査後の妊娠経過についてのフォローアップが可能である。
- 絨毛検査や羊水検査などの侵襲的胎児染色体検査に精通し、安全に行うことができる。
- 小児科の臨床遺伝専門医とも遺伝カウンセリングの連携が取れる体制である。
逆を返せば、「認可外施設」では、この条件を満たしていない可能性が高いということになります。つまり、検査前に「遺伝カウンセリング」が行われなかったり、結果の説明がなかったり、陽性となった場合のフォローアップが受けられなかったり、確定検査は別の施設で受ける必要があったりというリスクもあるということです。
しかしながら、「認可施設」はまだまだ少なく、お住まいの地域に「認可施設」がなく、「認可外施設」しか選択肢がないという方もいらっしゃるようです。
「認可外施設」であっても、フォローアップがしっかりしている施設はあるので、よく調べてから受検するのをおすすめします。
私は検診を受けている施設で受けました
私の場合は、妊娠が分かったタイミングでNIPTを受けることを決めていたので、妊婦検診を受ける病院を探すときにNIPTも受けられる施設にしようと決めていました。
病院探しについては、こちらの記事に書いています。
→転勤妻のマタニティライフ…病院選びの基準と「里帰り出産」の流れ – 働く転勤妻 (tenkin-saki.com)
「認可施設」は大病院であることが多いかと思いますが、普段検診を受けていない病院でも、紹介状があればNIPTだけ受けることができるようです。
夫婦でよく話し合おう
NIPTの年齢制限も撤廃され、徐々に広がりを見せる「出生前診断」。
とはいえ倫理的観点から、なかなか友人や同僚に「私出生前診断を受けました!」や「出生前診断を受けようか迷ってる」と言える方は少ないのではないでしょうか。私も検査を受けることを夫以外に相談せずに決めました。
だからこそ、検査を受けるのか否か、どこで受けるのか、陽性だったらどうするか等、夫婦でよく話し合うことが大切です。
2人の子どものことなので、周りの意見は置いておいて、夫婦の選択が尊重されるべきだと私は思います。
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